――その者の姿は異形。
巫女さんの衣装に武士の鎧(よろい)を着飾り。
――その者の力は人外。
あの弾幕のなか無傷で、そればかりか威風堂々と自らの存在を誇示し。
――その者の刀は神譚(しんたん)
この刀(シナリオ)の序幕はこう始まる。
影達は呆然とするしかなかった。
必殺の戦術が破られた。それだけではない、その破った相手がまだ成人にも満たない小娘と知ってさらに目を丸くする。
だが、それよりも――
[影達]「(なんだヤツの武器は……鞘が四本?)」
――影達を魅了する代物(しろもの)があった。
左右の両肩に鞘が一本ずつ担(かつ)ぐように鎧に備え付けられ、さらに右腰に一本帯び。左手に持つ鞘にだけ刀が納められている。
あれで全ての弾を切り防いだというのだろうか?
四刀流でもないのになぜ鞘が四本も?
疑問が影達の思考を惑わせ、動きを鈍らせる。
計り知れないモノと対峙する畏怖にも似たこの感覚。それほど強い絶対的な存在感を感じる。
これではまるであの方々と同じ………。
疑念を振り払うには仕掛けるしかない。影達は隙をうかがうようにジリジリと滲(にじ)み寄っていく。
たいする巫女侍は、右手を刀に添え居合いの構えをとり、静かに息を吐く。
構えをとる小柄な体から、かわいらしい花の蕾を連想させられる。が、同時にその蕾から恐怖を抱く程の鬼迫(きはく)が放たれており、否応(いやおう)なしに足が止まってしまう。
これ以上は危ない。
影達は間合いに入らぬよう距離を測り。さらに警戒を強めた。
しかし、『間合い』など最初から存在しなかった。