会社からの帰り道、不眠症の目にふと空き地の柿の木が飛び込んできた。
小学生の頃、健ちゃんとたけしくんとでよくその木に登って遊んだ。
夏には多くの青い実がなっていた。
最近は木登りをする子供を見ない。木にもここ数年実はなっていないようで、どこか寂しそうに見えた。
突然思い立って、十年以上挨拶しかしていない2人を連れ出し、木の下での宴会を持ちかけた。
街灯の中、コンビニの缶ビールとつまみで時間を忘れ、木登りの思い出話をした。
時おり木がざわめき、心地良い夜風が3人の少年の頬にあたっていた。
次の年、木に多くの実がなった。
どこからか子供が集まり、青い実を見上げ何やら騒いでいた。
いつの間にか不眠症もなくなっていた。