私の嫌な予感があたった。
祭りの夜は何かが起きる。
祭りのにぎやか光がそこにはなくまるで闇のように…
月の灯りだけ。
いきなり後から手で口をおおわれた私は、声すら出なかった。
涙目で顔を見ると相手は、大倉だった。
「脅かしてごめんな」
「なんでここに?」
「千夏ちゃんの姿が見えたから…つい気になって」
「しっ」
今度は私が大倉の口に人差し指をたてる。
久遠達には気付かれなかったみたいだ。
「ね、キスしよっか」
女の子が久遠に抱きつく。
久遠は冷たく言い放った。
「しない」
「なんで?」
「俺、好きな女しか受け付けないんだ」
「はぁ?」
「ジンマシンでんだよね?」
「なんなの?むかつく」
「お前こそうせろ、尻軽」
「ひどいっ」
そう言って女の子は久遠から走って逃げてった。
なんなの?…意味わかんないんだけど。
久遠の台詞が私の頭の中でリフレインする。
しばらくすると久遠も歩きだして、祭りの中に消えようとしていた。
私は考えもせずに、気付けば久遠の腕をつかんでた。
「前田…」
「さっきの…」
「お前…見てたのか…」
「ごめんなさい…」
二人の間に沈黙が流れる。