航宙機動部隊前史後編・46

まっかつ  2009-05-09投稿
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三皇帝の乱自体は辺境の局地戦のレベル以上の物では無かったかも知れないが、戦術・戦法面では幾つかの革新が見られた。
それ等の中でも特筆すべきなのが、亜光速にまで加速した母艦から航宙艇を発進させて敵を襲わせる宙母機動部隊の登場であった。

それまでの機動部隊戦では、艦列を厳密に密集させて攻撃と防御を競った集団戦が主流で、お互い敵の陣形や指揮系統を崩して組織力を失わせるのが最大の目的とされていた。
ガニバサに代表される歴代の名将達も、勝つために常にその技量を磨いて来たのだ。

だが、銀河元号一六三四年・三皇帝の一人、女帝イレーナ大元帥が、数的劣勢を補う為、言わば苦肉の策としてこの戦法を導入してから、戦場の様相はガラッと変わった。
史上最初の宙母機動部隊の陣容は、改装型宙母《レンジャー》始め三隻・護衛や後方支援の艦船六0隻・航宙艇搭載数合計一0八機と言う、実にささやかな物だった。
それが、ワルツ星系外縁に集結した人類総会義勇軍三八000隻の大艦隊に戦いを挑み―五千隻以上の損害を与えて勝利を収めたのだ。
三皇帝側は航宙艇わずか三機を失っただけだった。
正しく完全勝利だ。

亜光速で飛来する航宙艇《攻撃艇》に、遥か遠方から滑宙弾や噴進魚雷を一斉に放たれ、艦列をずたずたにされまくった義勇軍に成すすべも無かった。
密集隊系を取る大軍や固定された拠点はそれこそ《良い鴨》となった。
これに勢いを得た三皇帝側は早速正式な宙母機動部隊を整備し、人類総会陣営も慌てて同じ戦法を取り入れる羽目となった。

反面で、宙母機動部隊は一端負けるとその都度大量の搭載艇とパイロットを消耗すると言う弱点があった。
仮に航宙艇が健在でも、防御力の脆弱な母艦を失えば、航宙艇隊は事実上活動出来ないと言う難点も抱えていた。
当然維持・運営は難しい。
それでも最終兵器否定後の人類宇宙では、これは最強の戦略兵器として認知される様になって行った。

大戦後、宙母機動部隊を最初に受け継いだのは、長大な星間軌道の安全を守り、不法な大国や野心家を取り締まらなくてはならない星間軌道公社軍・次いで人類総会の後援の下、移住と探査を兼ねた大移動を開始した一部の航宙狩猟民族であった。
宙母機動部隊は、星間大植民時代の軍事的花形となるのである。

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