夜中に電話が掛かって来た。父からだった。母が話していた。何かとても深刻そうだった。驚きと悲しみを混ぜ合わせた様な感じだった。弟は寝ぼけた様子で母に「何〜」と聞いていた。母は「ごめん、ごめん!!」とか言いながら弟を寝かしつけていた。あたしは気付いた。母の声が震えていた事に。勘が良かった訳じゃないけどおばちゃんに関わってるんじゃないかと思った。おばちゃんって言うのはあたしが引っ越す前、菜々子達と同じ町に住んでるときに一緒に住んでいた父方親戚の人である。おばちゃんは旦那さんを戦争でなくし…よく考えればおばちゃんの事は何も知らない。ただおばちゃんはとても心が広い人だった。近所の人にも愛されてた。小柄で上品で思いやりがあって、あたしはおばちゃんが大好きだった。なのにおばちゃんに当たってた記憶がある。酷いことを言ってしまったり…そんな事があってもおばちゃんはあたしに常に優しくしてくれた。あたしが小学校高学年くらいになるまでおばちゃんは元気に過ごしていた。多分その頃既に八十歳後半だったはずなのによくお寺に参りに行っていた。お寺の長い階段もサラっと登るくらいだった。それが階段で転倒したのを初めにあちこちが悪くなっていった。