「まだまだ足りない…」
私の憎しみは、私の苦しみは、こんなものでは消えない。
プラナディン大陸の西岸の小国、アストニア。そこが私−−−アッシェンレッテ・ダインの故郷。そこでは、長い間、二つの民族−…ルタ族とファン族が血で血を洗う争いを繰り広げて来た。
人口の七割を占めるルタ族は、近代化に成功し、教育や化学力に優れた才能を発揮した。
しかし一方のファン族は、伝統を重んじ、ルタ族が嫌う霊魂崇拝、自然信仰を守っていた。
ルタ族は、数で多数をしめることから政治の実権を握り、ルタ族の儀礼にじゅんずることを拒否したファン族への迫害政策を開始した。
それはやがて民族浄化政策へと移行し、ファン族の土地には容赦ない攻撃が加えられ、多くの者が犠牲になった。私の兄も−…。
残されたものも、支配に屈しないためには隠れ住まわねばならず、未だ苦しい現実がファン族を苦しめている。
−−−黙っていられるわけがない。
ゆえに私は、仲間と友に、反政府組織「雷」に加入した。
戦い続ける。私は負けない。奴らを滅ぼすまでは…。
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