2-3 傍ら痛き若人
「お前は,
まだまだ生きるんだ。」
そう住職は純に言った。
しかし,本当は,
それを強く自分に言い聞かせていた。
― 優しいなぁ,住職は。
純は思った。
住職は死の見えた自分に少しでも生きる道を開こうとしてくれている。
「 ‥ 生きます。 」
純は呟いた。
その声には,些か諦めの色がある。
「 生きますよ。 」
今度は,
はっきりと言った。
純の声や表情からも,さっきの諦めの色はない。
死ぬまで精一杯生き抜く事を,今決意したのだ。
住職は,
そんな純の言葉を聞いて安心したようにそっと微笑むと,
のんびりと空を見上げ,
固く目を閉じた。
●●終わり●●