「お願いします!!」
修二が叫ぶ。
「おう、来い。」
組手争いが始まる。
西門さんは俺より10cm近く背が高い。
気を抜けば簡単に奥襟(首の後ろのえりのこと)を取られる。
しかし、さすがに日本トップクラスだった人だ。
隙を無くしていたはずが、奥襟を取られてしまった。
ガッ!!
こうなると苦しい。
修二も力は強い方だが、西門さんは修二よりもまだまだ強い。
だんだんと修二の頭が下がってくる。
頭を上げようとした瞬間。
ヒュッ。
体が浮いた。
足が跳ね上がってる。
内股(相手の内モモあたりを跳ね上げる技)だ!!
バァン!!
かわす間もなく投げられた。
内股。
西門さんの得意技だ。
これで全国の化け物どもを投げまくっていたらしい。
「どうした修ちゃん。もうおわりか?」
「そんなわけないですよ。」
そう言って一呼吸入れる。「お願いしますっ!!」
さっきよりも大きな声で叫んだ。
負けたままでいられるか。俺は昔とは違うんだ。
修二にとって西門さんは明らかに格上の相手だ。
だが、今の修二には負ける気持ちなど少しもなかった。