命の灯火を絶やさぬように生きた者。
最後に消える時まで己を突き通した者。 灯火を己の手で消した者。
だがどう足掻けども時間は止められない。
「君は誰だい?」
女らしい男の人がいた。金髪に紫の瞳。幸にも劣らない美しさ。長いサラサラの髪はポニーテールに結ばれている。
「ここは…?」
「私の家の庭だよ。」
「あの…。」
「あぁ。私は明。決して怪しい者じゃないよ。…もっとも君のが怪しいけどね。」
…言い返す言葉もない。
「俺は…怪しいものじゃないけど…。ドール。そう呼ばれている。」
もっとも幸にだけだけど。
「ドール…人形?変わった名を付ける親だね。ふふっ。でもシオンなら…つけるかも。」
シオン?あの曲と同じ―!
「シオンって誰ですか?」
「私の弟だよ。もっとも…血は繋がっていないけども。」
「…シオンさんに会えますか?」
「シオンに?」
彼は少し困った顔をする。
「いいんだけど…君は気が長い方かい?」
「え…?たぶん。」「じゃぁ私の家においで。シオンもいるから。」
彼の家は広くも狭くもない普通の家だった。平和な田舎の一軒家という感じだ。 「ただいま―シオン。」
俺には…聞こえていた。あの旋律がー。
「おかえり。」
微笑む君は美しい。君の事だったんだね―幸。
あの旋律が大音響で耳に響く。
何故に君の羽は紅いの?―まるで夜宵のような、血でできた紅い羽。
天使。
響く旋律に重なる鈴の音。
残された時間はあと僅かだった―。