なっ‥何っっ?!
この威圧感はっっ?!
職員室のドアを開けて、直ぐに飛び込んで来た光景――
それは――
見るからに、かっぷくの良い、眼鏡をかけた中年の男が、
校長と担任の渋川、聖人を目の前に、じょうぜつに話す姿だった。
どうやら、この男が森宮の父親らしい。
そして、その男の隣には、森宮 ヒロキの姿もあった。
職員室内の、どんよりとした重たい空気の中で、
ほかの先生達は、わざと見て見ぬ振りをしていながらも、
こちらの様子をちらちらと、うかがっていた。
あたしは、職員室の入り口付近に立ち、目の前の光景を、ただ見続けてしまったケド、
誰も、あたしの存在に気付く者はいなかった。
『――顔に傷を付けて帰って来たので、どうもおかしいとは思っていたんですよ。
うちのヒロキは、親に心配を掛けるような子ではありませんからね。
これは、悪い生徒が引き起こした事件にでも巻き込まれたのではないかと思っておりましたが、
やはり‥‥そのようですね?!』
森宮の父親は、そう言うと、自分の斜め向かいに立つ聖人をジロリと睨み付けた。
聖人も、森宮の父親の視線を跳ね返す様に、鋭い眼光を放っていた。
『森宮さん。この度は、我が校の生徒、北岡 聖人が、
御子息であるヒロキ君に対し、大変な無礼を働きました事を深くお詫び申し上げます。』
校長は、いかにも校長らしい、回りくどい言葉で、
目の前の森宮の父親に、謝罪の言葉を述べた。
『北岡っっ!!バカモノ!!早く謝らんかっっ!!
お前は、目の前におられるのが、どんなお方なのか分かっているのか?!』
渋川が聖人にそう言ったトキ、
父親の横で、森宮 ヒロキは、一瞬ニヤリと笑った。
『知らねーよッッ。あんたにとっては、大事なお方なんだろーがよッッ。』
聖人が渋川にそう返すと、それを見ていた校長の顔色が、一瞬変わった。
『北岡君。君は自分が、何故この場所に呼ばれ、こうして森宮さんの前に立たされているのかと言う事が分かっているのかね?!』
『‥‥‥‥。』
校長の言葉にも、聖人は何も答えなかった。