チリン…。
鈴が鳴る。
「お客さん…?未来から来た人だ。」
誰?
そこに明が入る。
「あぁ。リル。この人はドールさん。」
「ドール…でもこの人…。」
何かを言いかけて彼は悟ったかのように微笑んで言った。
「はじめまして。ボクはリル。ボクには未来や過去が見えるんだ。」
可愛らしい顔。
まだ少しだけ顔に幼さが残っている。
首についている首輪があの鈴の音らしい。
シオン―昔の?幸が言う。
「ふぅん。人形ねぇ。それを言うってことは人形肯定してるんだ。てことはドM?」
いや。この少しムカつく口振りからして間違いなく幸だ。
「なめんな!ドSだ!」
一同フリーズ。嫌な空気が流れる。
「あっ…。」
冷や汗が流れる。
リルはいきなり俺を掴んで走り出した。
意外と力もあるらしい。そいて速い。
誰も居ない外の街まで出ると彼は足を止めた。
「こんなに走ったの久しぶりだ…。」
俺は息が切々で死にそうになっていた。リルはそれに気づく。
「あっ。ごめん…。誰も居ないところで話をしたかったから…。」
とりあえず俺達は休んでから本題に入った。
「ボクには未来や過去が見えるといったよね?だから君が…ドールがなんで此処にいるのかわかるし…それにあそこにいては危ないから。もうすぐみんな…居なくなっちゃうから…。」
少し下をうつ向く。
「居なくなる…?買い物か?」
「ううん。みんな…殺される。ボクは死にたくないし…今を変えることはボクには許されてないから…。たぶんそろそろルナも―輝も帰ってくるし、輪も帰ってくる。…でも皆殺されちゃう。」
幸が言っていたあの日は幸とその同居人が何者かに殺されたということか…。
「リル。シオンって曲知ってる?」
「シオン?うん。あれはある男性が愛する女性のために作った曲なんだ。」
「へー。あとあの紅い羽って…。」
「あれは己の血液だよ。シオンは特別なんだ。羽のために幸は普通の人間の倍の血液を持っているんだって。」
夜宵と幸にもなにか接点はありそうだ。
「さて。そろそろ君は帰るべきだ。じゃぁねドール。きっとボクと君は現代でも会えるよ。」
チリン…。
鈴の音を最後に俺はまた気を失ってしまった。
目を覚ますとそこは俺の部屋だった。