ホームルームが始まった。
今日は急遽、転校先が来るらしく隣のタカシは、
「かわいい子がいいな。」
と言ってきた。ガラガラと扉が開く。
ロン毛の子だった。黒板の前に止まり、こちらを見る。
「あっ」
つい一ヶ月前に一目惚れしたノノカだった。
彼女は丁寧に自己紹介をしている。僕のことにはまだ気づいていないようだった。
隣のタカシは、かわいいじゃん。と言っている。
最後に、
「ふつつかな私ですが、仲良くしてください」
と言い終えると先生が席を指命していた。
「じゃ、ノノカさんは後ろの席の端、トシキ君の後ろね。」
僕の後ろ。
僕と彼女の視線が合う。
彼女が僕の隣を通る。時は早く進んでいった。
え?
何故?
彼女は静かに通り過ぎる。まるで僕のことは忘れたかのように。
後ろを振り返る。
「あの?」
「はい。」
彼女は優しく答える。
「僕のこと覚えてない?」
「えっ?どこかでお会いしました?」
忘れられていた。あんなに優しくほほ笑んでくれた彼女が僕を。
先生が僕のことを注意した。
僕は前を向きなおり、考えた。彼女のことを考えた。
タカシの声なんて聞こえない。