『なっ‥‥何だね、木下っっ!!
お前は、いつからここにいたんだ?!
北岡の肩を持つとは、どういう事だ?!
お前が北岡と付き合っている事は、ここにいる皆が知っている。
それを承知の上で、お前は北岡をかばうのだから、それは正当な理由があっての事なのだろうな?!』
渋川の、銀縁の眼鏡ごしに、細い視線がキラリと光った。
校長は、ハラハラした目であたしを見つめ、
森宮の父親は、冷たい目で冷静に見ている。
そして、
森宮 ヒロキは、その横で、ニヤリと含み笑いをしていた。
渋川の問い掛けに、
あたしは“もちろんです。”って、
そう答えるつもりだった――
なのに――
『――俺、謝ります。』
聖人が、あたしより先にそう言ったんだ――
そして、
聖人は次に、森宮に視線を向けた。
『森宮‥‥あのトキ殴ったコト――』
待って!!
聖人は悪くないよっっ!!
謝らせないっっ!!
『あたしをかばってくれたんですっっ!!』
聖人に謝らせるもんかっっ!!
その一心で叫んだ、あたしの声が、
聖人の声をさえぎってしまった――
『‥‥は‥‥は‥は‥‥‥。
これは一体どういう事ですか?!
校長先生に、渋川先生?!』
森宮の父親は、怒りで声が上擦っていた。
『し‥‥渋川君!!
な、何という事だね?!
君の受け持ちの生徒は2人とも!!
どういう教育の仕方をしているんだ君は?!』
校長がオロオロしながら渋川に言った。
『き、き、き、木下っっ!!
お前は一体どういうつもりだ?!
せっかく、この天邪鬼の北岡が今、謝ろうとしていたのに、邪魔しおって!!
ちゃんと説明しなさい!!』
ぷるぷる体を震わせている渋川に対して、
あたしの心は冷静だった。
聖人は、あたしの方を心配そうに見てたケド、
あたしは決心していた。
腐った大人は、
これ以上腐りようがないケド、
腐った大人に、
綺麗な心を腐らされる前に、
あたしは真実を語る――
もはや腐りかけ始めているソイツ――
森宮 ヒロキの為にもね――