祭りの夜は長い。
華やいでいるのにみんなそれぞれに心は曇っていた。
「千夏のこと…このままでいいの?」
「…このままもないよ」
「まぁくん…」
「懐かしいな、その呼び方」
中野がそう微笑むと理沙は
「間違えたかな…」
「なにを?」
「…圭ちゃんじゃなくて…まぁくん好きになれば良かった」
「…理沙」
「なんてね!何食べる?」
理沙は精一杯明るく振る舞ったが、中野の胸は切なくなる一方だった。
「理沙ちゃん?」
どこからか理沙を呼ぶ声がした。
「桜?」
向こうから手をふり、桜が樋口君と歩いてくる。
「あれ?中野くん?」
桜に気付き、中野も会釈。
「あ〜うん、まぁ…」
理沙はなんとなく気まずい感じがした。
理沙は話題を変えようと、
「あっ金魚?桜が?」
「ううん」
すると桜は首をふり、樋口君を見上げた。
樋口君はただ笑って微笑んだ。
その仲睦まじい様子に、思わず理沙のため息がでた。
「羨ましい…」
「なんかあった?」
桜は理沙を心配そうに見つめた。
なんだか思い詰めた感じがしたからだ。
「ううん、じゃまたね」
そう明るく理沙に切り返されたので、桜もそれ以上は何も問わなかった。