『あたし、小6で子供を堕胎したんです。』
シ―――――ンーー‐‐
言った瞬間――
職員室内の空気が静まり返るのを感じた。
『相手は、あたしの義理の父親です。
小6で堕胎したコトで、自責の念に押し潰され、あたしは心を壊してしまいました。
それは、あたしの心の中で今も、ずっとずっと滞っています。
ケド、そんなあたしを、聖人はいつも優しく見守ってくれていました。
あたしの心も、少しずつではありますが、落ち着きを取り戻しつつあります。
先日、そのコトで、森宮君から屈辱的な、言葉を受けたトキ、あたしをかばってくれた聖人が、森宮君を殴ってしまったんです。』
『う‥うちのヒロキが、あなたが堕胎したという事実について、屈辱的なからかい方をした‥‥と?!』
森宮の父親が、あたしの目をまっすぐ見据えて言った。
『はい。ですから、聖人は、あたしの為に、森宮君を殴ってしまったんです。
今回についての処分は、あたしが受けますので、どうか聖人の事は許してください。
お願いします。』
あたしは、森宮の父親に、深々と頭を下げた。
正直辛かった――
過去のコト――
過去の辛かったコトを思い出しながら語るのは――
辛かった――
出来れば思い出したくない――
封印してしまいたい出来事だから――
そのトキだった――
頭を下げていたあたしは、
急に息苦しさを感じた――
それは、
半年前にも感じたコトのある感覚――
『‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥く‥‥苦しっ‥‥‥‥‥。』
あたしは思わず、その場しにしゃがみ込んでしまった。
『奈央!!』
聖人が直ぐに駆け寄って、あたしを抱きかかえてくれた。