『はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥‥。』
『これ、口に当てて――』
聖人が机の上にあった、適当な大きさのビニール袋を、あたしの口に当ててくれた。
これは、過呼吸の発作を起こしたトキの応急処置だった。
『奈央は時々、過呼吸の発作を起こすんだ!!
テメェらが奈央に辛いコト、語らせたからだ!!
奈央は俺が保健室に連れて行く。
続きは、それからでもいいだろ?!
処分なら、俺が何だって受けてやるからよッ!!』
聖人に優しく背中をさすってもらったら、次第にあたしの呼吸も落ち着いてきた。
『し、し、し、渋川君!!
一体、木下はどうしたのかね?!
き、き、き、救急車は呼ばなくていいのかね?!』
校長は取り乱していた。
その姿があまりにもこっけいで、
妙に脳裏に焼き付いている。
それから――
呼吸が落ち着いたあたしは、
聖人に優しくお姫様抱っこをされた。
これで2度目のお姫様抱っこ――
『行くゼ!!』
バンッッ―ー‐
勢い良く職員室を出た――
大人達は、皆、聖人の行動の早さに、あっけにとられて立ち尽くしていただけ――
聖人。
いい匂いがする。
聖人に抱っこされながら――
あたしは静かに目を閉じた―――