「ハァ‥ハァ‥」
真夜中の路地裏にて、男は息を切らせ、額から大量に流れ出る汗をシャツの袖で拭いながら、星が瞬く満天の夜空を見つめた。
やがて呼吸を整え、深く“ふぅー”と溜め息をついた後、彼は頭を下ろし、視線を目の前に転がる血だらけの男に戻した。ようく見れば、その男の周囲の石畳は血によって真っ赤に染まっているのが分かる。
そして、彼は罪悪感と戦いながら、込み上げてくる良心を無理やり押し殺し、血だらけの男が着ているジャケットの懐に手を伸ばした。やがて中をゴソゴソと弄り始め、ついに彼は目的の“ブツ”を抜き取る事に成功する。
その抜き取ったブツである“財布”を片手に彼はその場にゆっくりと立ち上がり、手にしているその財布を開いた。僅かに差し込む月明かりを頼りに、彼は中身の札の枚数を数え始める。
その時‥
“コツッ”“コツ”
革靴の足音が、石畳に不気味に響いた。 その足音に非常に驚いた彼は、思わず握り締めていた財布を手から離し、瞬時に足音が聞こえた方へと振り向いた。
「フフッ、遅いじゃねぇか。
待ちくたびれたぜ‥」
目の前へと現れたのは、大柄で坊主頭に剃り込みを入れた屈強そうな男であった。
「ジェ、ジェリーさん‥」
「フッ、金は?」
ジェリーという男にそう言われ、彼は先ほど石畳に落とした財布をすぐさま拾い上げ、ジェリーに手渡した。
「血だらけじゃねぇか。
それより中身は……‥フッ、まぁまぁだな」
ジェリーのその言葉に、彼はホッと胸を撫で下ろした。
するとその時‥
「うっ、うぅ‥‥」
石畳で転がっていた血だらけの男がゆっくりと目を開けた。
「うぅ‥‥はっ、はぁ‥た、助けてくれ‥」
男は口を震わせながら必死に訴えかけた。
だが‥
「お前‥殺してなかったのか。
たくっ‥早くトドメをさせ。ほらっこれを貸してやる」
ジェリーは懐から拳銃を抜き取ると、それを無理やり彼に持たせた。
「フッ、さぁ早く殺れ」
しかし、彼は拳銃を男に向けてはいるが、必死に男から顔を背け、拳銃を握る手をガタガタと震わせていた。
そんな彼を見かねたジェリーは
「チッ、見てらんねぇな」
そう言うと、ジェリーは無理やり彼から拳銃を奪い取り、躊躇なく血だらけの男を無残にも撃ち殺した‥。