「ヒデ兄、イヤホンマイク着けてくれ」シンジは携帯を英彦に渡した。
「さっきの娘、めちゃくちゃ可愛かったなぁ…。なんかさぁ、良い匂いしてさぁ。俺の事、英ちゃんって呼んでくれてたよ」英彦は携帯をシンジに渡しながら言った。
「それなら、オレなんかピカちゃんだぜ?ヒカちゃんじゃ呼びにくいって…」ヒカルが英彦に得意気に言った。
「ピカちゃんとか、何かポケモンみてえじゃんか。ヒデちゃんの方が親近感がある気がするな」英彦が言う。
「オレはどっちかって言うと、後から来た娘…。カンちゃんだっけ?あの娘の方が好みだな。シンジ詳しく教えろ!」
「神野美穂さんだ。カンちゃんの名前。おそらく遼一さんに惚れてる。でも遼一さんは左手の薬指に指輪してたから…。可能性はゼロじゃないぜ?ヒカ兄…アタックするか?」
「ちょっと待てって…。まぁいいや。何かバタバタして混乱してる。あのチームと組むのか?信用できるのか?」ヒカルがシンジに聞いた。
「オレ達単独での優勝は難しい。あのチームは、最強のライバルになる可能性が高かった。賞金は折半だ。どちらかがトップをとるなら優勝も夢じゃない」
その時、シンジの携帯が鳴った。「はい…。峠を下って、高速道路に乗るのが最短ルートです。ええ…。今なら抜けられるでしょう…走り屋の車は来てますか?…そうですか。良かった。オレ達が単独で抜けた可能性が高いですね。はい。また連絡します」
「今なら抜けられるってなんだよ?乱闘なら脱出したじゃんか?」ヒカルがシンジに訊いた。
「検問だよ。乱闘の影響で通報されて警察が動いている可能性が高い。腹ペコだ。フランクフルトは?」シンジが言った。
「あぁ、アレか?アレは…その…アレだ…何て言うか…その…」英彦が口ごもる。
「オレの分まで食ったの?」
ヤバいシンジがキレる。ヒカルは覚悟した。
しかし、意外にもシンジは許してくれた。普段なら有り得ない。
「兄貴達も頑張ったもんな」
シンジが呟いた。