激しさを増す乱闘を車の中から眺めている三人の刑事がいた。
「どうするんすか?」トオルが、いてもたっても居られず言った。今にも外に飛び出していきそうだ。
それに比べ二人の<危険な刑事>は、のんびりした口調で話をしていた。
「あ〜あ〜。危ねぇなぁ。近頃のガキどもは、加減を知らんからなぁ。このままじゃ、マジで死人がでるかも…。どうするタカ?」ユウジが訊いた。
タカヤマ刑事は、迷っているようだった。
「ああ、分かってる…。しかし、このガキどもをパクっても仕方がない。もっと大きなヤマだと勘が言っている…」ダンディーにタカヤマが言う。
「それに、あの暴走族…。オレ達が昔、やり合った暴力団の傘下のグループだ。ユウジ…気付いてるか?」
「ああ。ビデオカメラを持ったヤツが、あちこちにいるな…。レースを中継してるのか?ふん…トトカルチョでもやってるのかもな」
「先輩達!なんでそんなに落ち着いてるんですか!ホントに死人が出ますよ」
「分かってるって…。もう、トオルちゃん若いのねぇ」ユウジがオカマ口調でからかって言った。
「よし、応援を要請しよう。オレ達は潜入捜査を続行だ」タカヤマ刑事が言った。
その時に音楽が聞こえてきた。スピーカーから流しているようだ。外灯に照らされて三人の女が歌っている。
「あ、あれ?」トオルが歌っている女を見て言った。
「どうした?」ユウジが訊いた。
「アレって、歌手のナミエじゃないっすか?あれれ…。アユミにクミまでいる!」トオルは興奮して言った。
「ああん?あの有名な歌手か?なんでこんな田舎のドライブインでストリートパフォーマンスやるんだよ?ソックリさんか、コピーだろう。近頃の若い連中は個性がないからな。皆、同じに見える」ユウジが言った。
「いや…。アレ、本人だぜ…。間違いない」タカヤマが断言した。
「なんでタカが分かるんだよ?」ユウジが呆れて言う。
「オレはクミの大ファンなんだよ!」
ユウジはコーヒーを吹き出しそうになった。
「タカ…。お前…」ユウジが唖然として言った。
「悪いか?」
「いや、ずっと黙っていたがオレはアユミの大ファンだ」ユウジが真剣な顔で言った。
「お、オレはナミエファンっす」トオルが言った。
「あの三人、守るぞ!」タカヤマが叫んだ。
「イクぜ、トオル!」