「ねー彩菜」
詩織に肩を叩かれて、携帯への目線を詩織へと移した。
「何?」
「まーた探してんの?」
「今お金なくってさ〜」
詩織は呆れたように笑って、廊下に目をやり溜め息をついた。
「また来てるじゃん」
「んー?」
同じように廊下に目をやると、゙彩菜ちゃんLove゙といううちわを持った後輩たちがたくさん集まっていた。
「あいつら懲りないね」
詩織とあたしは目を見合わせると、クスッと笑った。
藤森 彩菜 (17)。
顔にも体にも自信たっぷり。
だから、街に出るとスカウトマンが群がってくる。
ナンパもかなり来るし、迷惑メールやイタ電も。
「彩菜、また来てるよ〜」
松本 詩織 (17)。
あたしと同じく。
中学の時からの心友。
「もういい加減諦めて下さいって言っといてよ」
「本人からじゃないと嫌だってさ」
「もー‥」
しぶしぶ席を立って廊下に出た。
「‥あのっ‥」
「あー‥拓くん?」
「‥まだ諦められません!」
「ごめんね?」
「‥俺と試して見てから決めてくれませんか?」