数百メートル歩いた先にあったのはドーム状の部屋だった。壁は透明で、外の景色が一望できる。地上から二千メートルほどの高さにこの部屋はあるようだ。空は黒い雲に覆われており地上は荒野しか見えない。
外の景色を眺めながら彼が質問した。
「人間はどこにいる。」
「…人間は大変な罪を犯した。」
人審士はどこか悲しげにそう言った。
「質問に答えろ。」
「まぁまて順を追って説明しないとな。」
「…」
彼は怪訝な顔をして黙り込んだ。
「大フィミーリア。あれは実は古代人が作り出した世界浄化装置の外装だったのだ。浄化装置は酷くデリケートで人間が全ての外装を剥がして数十年後、異常をきたしその活動を止めてしまった。自然による浄化などの限界はすで越えてしまっていてな。すぐにこの星は生物のすめない世界になってしまった。」
「じゃあ人間は…」
「ああ、既に死滅した。」
彼は複雑な心境に包まれ黙り込んだ。
「お前は外に出る権利がある。もしかしたら人間にも生き残りが行るかもしれない。」
少しの沈黙の後彼が応えた。
「行くよ。」
「そうか。ミオス(MWWS)頼んだよ。」
「はい。」
どこからともなく声がした。
「ミオスとは…。」
「紹介が遅れたな。この塔のマザーコンピューター、ミオスだ。彼女の意識はこの塔全体にあり常にお前たちを観察している。」
人審士が説明し終わると壁と思われていた部分が轟音をたてながら横にスライドし、外への通路が出来た。
「この高さから落ちても死ぬことはあり得ないが一応飛行ユニットを渡しておこう。」
彼の目の前の床が開き翼型の飛行ユニットがあらわれた。背中に差し込むことで神経を通わし操作出来る。彼はそれを装着し外へ続く扉へ歩いていった。
「幸運を。」
飛び立つ間際に人審士がそう言った。