ねえ 聞こえてる?
私の声。
今も貴方は私と同じ月を見てるの?
あの日のように
月をみながら
微笑んでるの?
月を見ると苦しくなるよ。
貴方の無邪気な笑顔。
優しい手。
大きな背中。
思い出したくないのに思い出してしまう。
出逢ってくれてありがとう。
私の涙が月灯にともされる。
高校3年生の春。
「こら-!!!!!」
どこかの教室から怒鳴り声が聞こえる。
「また碧井か。」
私の隣の席の高田くんがつぶやいた。
「碧井?」
私のクラスは理数科。3年間クラス替えなんてしない。
だから他のクラスとはあまり交流がない。
「どうせまた碧井が遅刻したんだろう。」
仙人みたいにひげを生やした先生がため息。
私にとって誰が遅刻しようと構わなかった。国公立に受かること。それが私の今の目標。
長い棒をもって講義をする先生。
「お前ら。国公立行くにはこのままじゃいかんぞ!!」
聞き飽きた。
成績が何。
国公立が何。
毎日机にむかって。
なんてつまらない人生なんだろう。
「朱里(あかり)、チャイムなったよ!」
「あっうん。」
私の顔を
ショートヘアーの似合う茜がのぞきこむ。
茜とは中学校からの友達。
「朱里と茜。名前似てるね!