わたし。
わたしだと思っていた。
いつか、あの人が選ぶ女。あの人が、留まる女。あの人が帰る女。
帰る場所。
もし、それが私だったなら、私は、出来る限りのことを、私が出来る全てを尽くし、あの人の帰る場所をつくる。
美味しい物を作って、ゆっくり出来る空間を作って、あの人が愛するように、私の手を「きれいだ」と言ってくれたように、それがつづくように、私の全ての時間をかけて、あの人を待とう。
あの人が、帰る場所が、わたしだったならば。
なんで、
なんで、
わたしじゃないの?
どうして、どうして、わたしじゃないの?
ああ……、
本当はわかっている。本当はわかっている。わかっているんだよ。
私じゃなかった訳も、わかっているよ。
失ってから気付くんだね。
いくらでも伝えられる時に伝えずにいた私は、仕方ないね。失った物を、いつまでも引きずって、おしまいだ。
ああ、伝えられないから、届かないから、思う存分に叫べるのか……
愛していた
と。