子供の頃の野望。
野望というと、ちょっとしっくりこないなぁ。
そうだな…、俺が子供の頃になりたかったもの。
何も分かってないくせに、目立ちたがり屋だった俺は、卒業アルバムのそういう質問に、『デパートのマネキン』と、常識人では少々分かりにくいコメントを残している。
もちろん、ふざけてである。
デパートのマネキンというのは、言うまでもなくアレである。
その店の主旨に沿った流行色の服を着せられ、今時のモデルたちでは、絶対にしそうにない古典的なポーズで固められた、今は旧き良き時代の思い出となってしまったアレである。
なんであんなものになりたかったのだろう?
リストラ組でも就職希望しないぜ。
きっと俺は、社会を傍観し観察する一つの存在になりたかったのだろうと思う。
なにかしら含蓄があるようだが、要は、人の流れを、ぼんやりといつまでも眺めていられる存在になりたかったのだろう。
お地蔵様だと何だか有難いし、自販機だと夜中に悪ガキに壊されそうだったからかも知れない。
今後は、夏ならマネキン派・冬でもマネキン派教を、頭の柔らかい人達から説いていって、いつかは優秀なデパートマネキンになりたい。