「いい?二人とも出来るだけ目立たないようにするのよ!」イッコーが、走りながら言った。
カバちゃんと愛がイッコーに続く。
いきなり男がイッコーに殴りかかって来た。
「いやぁ!」叫ぶイッコーの後ろからカバちゃんが、躍り出た。
走って来た勢いをそのまま利用し、跳び後ろ回し蹴りをキメる。男が軽く2メートルは吹っ飛んだ。
ダンスで鍛えた強靭な脚力を回転の力に加えて放ったローリングソバットだ。カバちゃんは着地して、しゃなりと言った。「アラ、ごめんなさい」
言葉や態度とは裏腹に凄まじい威力の蹴りだった。
しかし、別の男が、カバちゃんに横からタックルをしてきた。
「きゃあ!」カバちゃんが悲鳴を上げる。すぐに愛が男にパンチをくらわす。
「何すんねん!コラァ!!」愛のパンチがカウンターで男の顔面をとらえる。
「ああん、二人ともアリガトウ」イッコーは二人に礼を言ってまた走り出した。
でも何でアタシ達ってすぐに狙われるんだろう?乱闘に加わったばかりなのに…。やっぱり自分より弱い者を真っ先に狙うのね。イジメと同じだわ。だったら、アタシは絶対に負けないわ。芸能界で、のしあがって来たアタシ達が、アンタ達みたいなチャラい奴に負けるもんですか。こちとら覚悟がハナから違うのよ!
三人のオカマは、ケインを目指して走り続けた。
後ろからは、クミ、アユミ、ナミエの愛の歌が聞こえる。歌声が三人のオカマの背中を押した。
ケインは、三人の歌姫が叫ぶ愛の歌を聴いて思った。そう…。オレも、たった今気が付いたよ。<愛>が力になるんだ。
「あれ…?あの走ってるの…イッコーさんじゃないか?」ショージがワキタに言った。
「えっ?イッコーさん?歌ってるのは、クミとアユミとナミエだろ?何がどうなってるんだ?」ワキタは困惑していた。
「それにしてもイッコーさん達…メチャクチャ目立ってるな。アレじゃ狙ってくれって言ってるようなもんだぜ」ショージが言った。
「とにかく助けに行こう」ケインが走り出した。
「ああ〜ん。怖かったわぁ」イッコーがケインに抱きついた。
「何してるの?イッコーさん達?」
「レースよ。アナタ達もそうでしょ?さぁ行きましょう。この騒ぎならあの三人がきっと止めるわ」
「愛の力ですね?」ケインが言った。
「分かってるじゃない」イッコーがウインクした。