猫物語その7(改)

α  2009-05-19投稿
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 ああ憎たらしい捕食者め!次会ったなら必ずこの嘴であのキラキラした瞳をつついてやる!

 父母らの尽力で一命を取り留めた子雀は危機を脱っした後の高揚のままに極言します。

 これ、およしなさい。お前が今生きているのは誰のお陰だと思うのです?猫に仕返しするなどと大層な口をきける立場ですか。
 あたら若い命を無為に終わらせてはなりません。
 お前たちに万一の事があれば母も生きてはおれません。お前は自分の親を不幸にして愉しいですか?

 涙まじりに母親に諭されて子雀はうろたえ恥じ入るばかりです。

 申し訳ありません。僕が軽率でした。

 ああ、もう、この子は口先ばかり...。そう言った次の日には私のきかせた注意などは少しも憶えてやしない。
 せめて兄の何分の一かでも賢かったなら母はどんなに安心か...

 と嘆いて母雀は笛吹の情報を急ぎ知らせに来た一番上の子雀を顧みます。
 末の子雀が兄ばかりが賢いと誉められるのを面白く思ってないのを知っている一番上の子雀は遠慮がちに微笑み申します。

 無事助かって何よりではありませんか。お前も二度と地面の上で油断などしないだろう?

 はいもちろんです、兄さん。危ないところを救ってくれて有難うございました。

 屈託ない笑顔で末の子雀は答えます。この素直な様子を目にする度、母親の愛情を独占気味の末っ子を出来の良い一番上の子雀は憎みきれずにいるのでした。
 兄雀は実際、優秀なものだから他の雀たちから折に触れて敬遠されてしまいます。そのため末の子雀の、確かに軽率には違いなくても分け隔てのない態度が嬉しく思われてなりません。

 でも何故あの猫めに笛吹の居所を正直に教えたりしたのです?
 野犬の住み処でも偽って教えたら よかったではありませんか!

 お前も懲りない雀だな。散々皆に心配かけたのに。
 いいか、お前は あの猫にぺろりと食べられていてもおかしくはなかったものを、猫が約束を果たしたから助かったのだぞ。
 だのに我々が 卑劣なまねをするのは罷りならん。もしそうしたならいずれ必ずや仕返しされるだろう。むやみな恨みをかうのは愚かな事だと心得なさい。

 と父雀は末の子雀の不用意な発言を聞き咎めて苦言を呈すると、子猫が去って行った方向を眺めやって短く息をついたのでした。

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