おお、なるほど素晴らしい!
ときに一の蛙よ。
何かね、二の蛙よ。
実は西に広がる平原で、つむじ風が吹いたそうだ。
なんと物騒な。それで、誰にも怪我はなかったか?
うむ、あの辺りには少し大きめの池があったが幸い蛙の死体は見つかってないらしい。
なにせみんなまとめて つむじ風に巻き上げられていったそうだからな。
うむ、それはめでたい。怪我蛙がいなくて何よりだ。
この珍妙な会話をきいていた子猫は つい隠れていた草むらから蛙に声をかけてしまいました。
あの、誰もいないからって怪我してないとは限らにゃいと思いにゃすけど...
突然の声にぎょっとしたものの、どんな理由であれ慌てふためくのはみっともないと思っている蛙たちは 声の主が誰だか確認しようともせず問い返します。
ではなにかね君はあれかね、そのー、とどのつまりは私の言ったことが気に食わないと、そう言いたいわけなのかね。
これが勤め先の上司や取引先の重役や学校の成績つける担任などのうち、せっかく社会的信用があるのに口が軽くて執念深く自分の品性を犠牲にしてでも、無辜のかわりに判断力の乏しい方々に悪辣な印象を埋め込もうとする低俗者だったら子猫も 馬鹿は見たくないとばかりに早々に立ち去ったでしょうが、ただの蛙ではそうもなりません。
いえ、わたしが言いたいのはつむじ風に巻き上げられた蛙はどこかに いずれは落ちるだろうし、落ちたら怪我くらいするのではにゃいかということにゃんです。
わたしたち猫は高い所から落ちても 必殺ねこひねりで かの体操選手も羨むほどに美しく華麗に着地できますけどにぇ、蛙さんたちも高い所から落ちて平気にゃんですか?あんまり高い所にいるの見たことありませんけれど。
な、な、な、〜
は?七?
なに〜猫だとー?
おいおい、君君、質の悪い冗談はやめたまえ。何を根拠に君が猫だというんだい。
いや、あなた方こそ何を根拠にわたしが猫じゃにゃいと言うんですにゃ?
と聞き返して子猫は草むらからひょいと可愛い顔を蛙たちに見せたのです。
きゃー捕食者!
蛙たちの悲鳴で、なるほど蛙も食べられるにょかと子猫はひそかに知りましたが、小鳥より美味しそうには見えないにゃ。とも思います。