私は自分の耳を疑った。
桜の言葉が私をフリーズさせた。
「…留学?」
「ウィーンに」
笑顔で答える桜の瞳は涙で溢れていた。
「…いつ?」
「…二学期から」
「じゃあ…今日で…」
「うん…理沙ちゃんにも後で言うつもり」
「…樋口君には?」
すると桜は首を横にふって上を向いた。
桜の気持ち、わかる気がした…でも…
「言った方がいいよ…私が言うのもなんだけど…このままはよくない」
自分自身中途半端だけど…
でも何も言わないこんなお別れは辛すぎる…
「うん…ありがとう」
顔をあげて答えた桜はなんだかかっこよかった。
「入りにくいんだけど…」
「理沙!!」
「理沙ちゃん」
声がした方を振り向くと理沙が教室の扉にもたれていた。
「桜、頑張っておいでよ」
理沙の言葉に桜は涙声で
「大好き」
と抱きついた。
理沙はかっこよすぎる。
私も頑張っておいでよって言いたかったな…
微笑ましくみていると理沙が不敵に笑った。
「お昼食べたら樋口君の家に行こう」
かなわない!
制服時代は何もかもが特別だという。
私ははやくも一生の友達と巡り逢えた気がする。
三人ならなんでも怖くない気がして笑えた。