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『奈央!!大丈夫?!職員室へ行ったら、ここだって言うから‥‥。』
あたしが職員室で過呼吸の発作を起こしたと聞いて、
真っ先に保健室に駆け付けてくれたのは、ユカだった。
『あら、秋田谷さん。木下さんなら心配いらないわよ。』
あたしの様子を見てくれていた篠原先生は、
息せき切って入って来たユカにそう言うと、
ベッドサイドに置かれた椅子から、ゆっくりと立ち上がった。
そして、
篠原先生の向かい側のベッドサイドに椅子を置き、腰を掛けていた聖人は、
ユカの姿を見ると、
あたし達2人が退室した後の職員室の様子を、真っ先に聞き出した。
『秋田谷。森宮のオヤジと校長、渋川は、まだ職員室にいるんだろ?!』
聖人の言葉にユカは、一瞬の間を置き、
何か、吹っ切れた様な顔で、こう言ったんだ。
『‥‥さぁね。
あ‥あたし、ヒロキのお父さんに全部言っちゃった。』
ベッドの上で横になっていたあたしは、
さっきから、うとうとしながらユカと聖人の会話を聞いていたケド、
今のユカの言葉で、すっかり目が覚めてしまった。
『全部言ったって、何を?!』
聖人は、すかさずユカにそう聞いた。
『だから、ヒロキが3年の女子に、クサの栽培をやらせてたコトと、
不特定多数の女子と関係を持っているコトとか――』
勢いよく、そう答えたユカは、側にいる篠原先生の存在を忘れていたらしい。
でも、篠原先生は、そんな2人のやりとりを、
わざと気付かない振りをしてくれていた。
『マ‥‥マジで?!』
意外なユカの行動に、
さすがの聖人もビックリした様で、
切れ長の目を、大きくまん丸に見開きながら、そう言った。
『だって、奈央の性格からして、きっと、ヒロキのコトを、そこまで話してないと思ったから。
ヒロキのお父さんと、校長、渋川の3人揃ってオロオロしてたわよ。』
『すげぇ‥‥。てか、よく言ったゼ‥‥。』
『それでさ、最後にあたし、ヒロキの顔を思いっきりビンタしてやったわよ!!
あ〜スッキリしたぁ〜!!』