石川遼一のイストは、検問にかかっていた。
石塚クリーニングのステップワゴンに、やっと追い付いたと思った矢先だった。
ステップワゴンは警察官に止められたものの1分程で検問を通過した。次は遼一達の番だ。
「こんばんは。検問にご協力下さい」ぎこちない笑顔を浮かべ警官が言った。目が笑っていない。
「ええ。構いませんよ。お仕事お疲れ様です」遼一が答える。
「免許証を見せてください」警官は、そう言いながら車内を見渡した。
「どうぞ」遼一がゴールドの免許証を渡す。
「お酒は飲んでませんよね?息を吐いて下さい」
遼一は言われた通りに息を吐いた。
「はい。結構です。これからどちらへ?」
「彼女達を送って、もう帰る所です」
「可愛い女の子二人連れて羨ましいですね。失礼ですが職業は大学か塾の講師か何かですか?」警官は後部座席の桃子をじろじろと見ながら言った。鼻をスンスンと鳴らしている。
桃子の香水の香りが気になるらしい。
「…現在、失業中です」遼一が答えた。少し間が空いたのは遼一らしくないと助手席の美穂は思った。
「無職ですか?」少し高圧的に警官の態度が変わった。
「就職活動中です。あちこちの就職支援セミナー等に参加しています。今日もその帰りです」遼一はセミナーのパンフレットを警官に見せた。
「ちょっと降りて下さい」警官が有無を言わせない口調で言った。
指示に従って、遼一は車を降りていった。警官に色々と尋問されている。
「何か嫌な感じね」桃子が美穂に言った。
「うん。シンジ君達の車はすぐ終わったのに…」美穂は心配そうに遼一を見た。
遼一は、片足で立ったり、真っ直ぐ歩けるか等を調べられていた。
「何よ、飲酒の事は、さっき結構ですって言ったくせに…」桃子がイラついて言った。
遼一が警官と一緒に戻ってきた。
「では、気をつけてお帰り下さい」警官が桃子と美穂に、ねっとりとした視線を送った。
「失礼…」遼一は車を出した。
「何なのアレじゃ犯罪者みたいじゃない?」桃子が遼一に言った。
「遼一さん…大丈夫だったんですか?何か言われました?」美穂は遼一を見た。
「いや…別に。ただ少し、しつこかったな。差別も甚だしい。急がなくちゃ」
「私達が無職だから?」
「うん。おそらく…。まぁ想定範囲内だ」
こんな事まで想定範囲内って…。カッコ良すぎるわ遼一さん。