ユカってば、凄い。
森宮の父親は、教育委員会の教育長。
その父親を目の前にして、森宮にビンタするなんて。
あたしは、
自分の過去のコトを話すだけで精一杯だったのに。
ユカの強さには驚いた。
そして、
それと同時に、言葉では、うまく表現出来ないケド、
なんか、
誇らしい気分になった。
――と、そのトキ――
ガラッッ―ー‐
『秋田谷と北岡は、いるか?!』
突然、保健室のドアを開けて入って来たのは、渋川だった。
『あ?!俺の処分の話なら、後で職員室で聞くゼ?!』
聖人が渋川を睨み付けると、
真っ赤な顔をした渋川が、物凄い剣幕でまくし立てた。
『ばっ、バカモノ!!
北岡と木下の次は、秋田谷までが‥‥。
一体うちのクラスは、どうなっているんだ???
森宮氏は、かなり御立腹だぞ!!
今日の所は、黙ってお引き取り頂いたが、
それには‥‥北岡、
お前の処分を、かなり厳しいモノにするコトを条件とされた。
そして、秋田谷。
森宮氏は、お前が森宮氏の御子息について言った事は、
全て事実無根であるとおっしゃっていた。
校長は、PTA会長である、お前の父親にも、
今日の事を報告すると言う事だ。
ま、校長が報告しなくても、
森宮氏の方から、お前の父親に連絡をするだろうがな。』
渋川が一方的にまくし立てている間中、
聖人は、ずっと渋川を睨み付けていて、
ユカも、そんな渋川のコトを、
さげすんだ目付きで、じっと見つめていた。
あたし達は――
こんな状況に追い込まれても――
どうするコトも出来ないの?!――
ただ――
正しいと思うコトを――
貫き通すコトが――
なぜ――
こんなに難しいのだろう――
正しいコトが正しくなくて――
正しくないコトでも正しいと認める――
それが出来なければ――
大人になれないの?!――
それならあたしは――
ずっと――
大人になんかなりたくない――
そんな――
汚い大人になんか――
なりたくないよ――