樋口家は、時がゆるやかに流れているように感じた。
居間から見える日本庭園も世話が行き届いていて、池には鯉まで泳いでいる。
道場を隣接している一階建ての平屋作りも、木造ベースで木のぬくもりを感じ、家具もアンティークで柱時計が静かに時を刻み続けている。
しばらくすると袴姿の樋口君が廊下を走ってきてくれた。
初☆袴姿、似合い過ぎ!
その後ろには樋口君に隠れるように司君がいた。
「司は練習に戻りなさい」
「…はい、姉さん」
しょぼくれた姿が可愛い。さっきの優しそうな人はお姉さんなんだ。
お母さんにしては若いなと思ってたんだ。
「どうしたんだ?三人で」
桜だけじゃなく、私達がいることに樋口君は驚いた様子だった。
「総、立ち話もなんですからお庭でお話してきたら」
「…はい」
ちょっと照れた様に答えた樋口君の姿は、さっきの司君そっくりでなんだか可愛いと思えた。
いつのまにか用意された人数分の履き物で、樋口君に案内されながら見事なお庭を見せてもらった。
でも桜は言い出しにくそうだった。
「私達、鯉しばらく見てたいんだけど」
理沙が突然言い出した。
私も頷く。
演技ができない二人だ。