孤高の天才、シンジは焦っていた。オレの計算が狂い始めている。そんなバカな…。作戦は大成功だった。なのに何故!?
ステップワゴンのハンドルを握る手に力がこもる。
遼一さんは想定範囲内だと言っていた…。こんな事は有り得ないだろ?彼は何で想定できた?他に何て言ってたっけ?何か食べなさい…か。
「ヒカ兄、食い物とってくれ。何でも良い」
シンジは買い込んでいた食料をむさぼり食べ始めた。
コンビニおにぎり、調理パン、チョコレート…。次々にシンジの胃袋に収まっていく。
もちろん二人の兄も同じようにたくさん食べていた。
1リットルのオレンジジュースを飲んでシンジは息を吐いた。
「ふう…。何か…落ち着いたな」シンジは改めてさっきの遼一の言葉を思い出していた。
確認するよ。2位じゃなくて3位だね。良いシナリオではないけどね…。ポイント配分が問題だな。だったか…。何故そんな確認をしたんだろうか?
シンジの思考が加速する。
「遼一さん…何か見たな…」
「は?何か言ったか?」英彦がシンジに聞いた。
その時、シンジの携帯が鳴った。全く…。遼一さん、監視カメラでも見てるんじゃないか?シンジは苦笑して電話に出た。
「シンジ君落ち着いたかい?」
「はい。大丈夫です。」
「俺達、4位で30ポイントだったよ。これは運が向いてきた…」
「ポイント配分が問題だと言ってましたね?」
「うん。1位が100なのに4位で30も貰えたんだよ。何か気付かないか?」
「はい。トップを取るのが優位なのは確かですが、決定的なアドバンテージでもないですね。しかし、ワンツーフィニッシュの予測をしていただけに、ちょっとヘコみました」
「シンジ君…この際だから言っておこう。君は天才だけど一つだけ弱点がある」
「経験不足ですか?」
「そう…。一を聞いて十を知る天才ならではの弱点だ。若い君は世間知らずの面がある」
「具体的に言うと?」
「予測が若干、楽観的なんだよ。兄さん達の影響もあるだろうけど…君はオプティミストだろう?」
「はい。そうかも知れません」
「俺は真逆だ。バリバリのペシミストなんだ」
「遼一さん…何か見ましたね?」
「さすが…。うん。偶然だったけど…。県外ナンバーだから目が行った。凄い雰囲気あるシーマだ。恐らく参加者だろう。男が二人確認できた。俺が怖いのはもう1チームの姿が見えない事だ」