「とにかく…。あの乱闘の中を、俺達より目立たず、俺達より先にスタートしたんだろう。検問にもかからなかったかも知れない。そんなチームが一つ位はあるかな…と予想してたんだ」
遼一は続けた。
「世の中上には上がいる。下には下がいる。キリがない。差別や偏見をさっきも痛感したよ。検問で7分も止められたよ」
「なるほど…。勉強になります。遼一さんって見かけによらずネガティブなんですね」
「まぁね…。高速道路禁止となれば、地元の俺達が断然有利だ。あのシーマは関東ナンバーだった。もし参加者だったらナビ頼りだろう」
「ちょっと待って!スマチームって…ひょっとしたら…」美穂が会話に割って入った。空気を読む美穂にしては珍しいことだ。
「あ、あれ?カンちゃん?あぁイヤホンマイクじゃなくて、携帯をスピーカーにしてるんですね」
「うん。何か…シンジ君との会話を二人にも聞いて貰った方が良さそうな気がして…この電話からそうしてる」
「予感というか胸騒ぎというか虫の知らせって奴ですね。相変わらず気を操ってますね遼一さん。…でカンちゃん何か?聞こえる?」
「うん聞こえる。お願い。みんな笑わないでね…。スマチームって、アイドルのタクヤのいるグループじゃないかな…」
桃子が笑った。「何でスーパーアイドルすまっぷが、こんなレースに出るのよ」
遼一もシンジも笑わなかった。桃子は黙った。
「可能性はゼロじゃない。助手席の男と目が合ったがどこかで見た顔だった。残念ながら俺はテレビを全く観ないから確信できない」遼一が言う。
「遼一さんってテレビ観ないんですか?まぁそれは置いといて…。確かナカイ君の愛車は長年シーマですよ。でも今はベンツだったはずです」
「へぇ、シンジ君何でも知ってるんだね。金持ちなら何台か持っているだろう。ベンツよりは目立たず走り屋にも見えない。俺ならシーマを使うね」
「姪の明菜がタクヤのファンなんですよ。遼一さん国民的アイドルなんすよ?マジで知らないんですか?」
「知ってるよ。でも会った事はない。もし有れば気で分かる。<気が付く>よ」
「なるほど。もし国民的アイドルなら強敵ですね。目立たず行動するのが生活の一部になってる」シンジが言う。
「うん。確かに…でもね、俺は2位のチームの方が怖い。現にシーマは俺達に気付かれてる。アイドルなら、途中棄権の可能性が高いし」