何度目だろう。また私はこの鎌を振りおろしてしまった。違う、私に体の自由などなかった。
屋上から下に見える青年の姿が小さくなっていく。その命はあと僅かで飛び降り自殺という形式で絶え、私はまた地上から消えるのだろう。
私の意志とは関係なく体が動き、私の目の前で人が死ぬ。
罪の意識で心が折れる、そんなものは遥か昔に経験している。いっそ心などなければ、それこそ機械じみた死神になってしまえばどれほど楽なことか。
私に主がいたとしても、それが神か悪魔かはわからない。でもこれが何らかの行為に対する戒めだということはわかる。
なら、私はいったい何をした。
どうして、私を死神として扱う。
「…あなたは他者の中で確かに輝いていた」
何者にも支配されないはずの私の言葉。彼には決して届かず結局自身への戒めとなる。
この役割を担う以前の記憶など私にない。巡り会う人間に認知すらされず別れてしまう。
私は空気と同等の存在。私には輝きなどない。
それなのにどうして、あなたは最期に私を見つめ続ける。
私は輝いてなどいないのだよ?