タクト、ウェド、フラット、ダイヤの三人はクローブの狭い馬車に揺られながら、鏡の宮殿を目指していた。
「おい。着いたぞ」
クローブは馬車の後ろに回ったかと思うと、ぶっきらぼうに馬車の荷台の扉を開けた。
「本当にこの中にパールさんがいるんですよね?」
フラットは真っ先に馬車から降りて宮殿を見上げていた。
タクトは馬車から降りて宮殿を見上げた。『鏡の宮殿』はその名に負けない程に壁や柱
、ありとあらゆる物が鏡でできていた。
「なんだぁ?この宮殿。鬱陶しくてしかたがねぇ。目がおかしくなっちまうぜ」
ウェドは面倒くさそうに目を細めた。
「こっちよー」
ダイヤはひとり、跳び跳ねるようにして宮殿に入るための門へ走って行った。
「あれ?クローブは来ないのか?」
タクトが後ろで馬の顔を不器用に撫でていたクローブに聞いた。
「・・・見れば分かるだろ」
クローブはタクトを睨み付けた。
「あ、ああ、分かる分かる。よ〜く分かるよ」
タクトはクローブに背を向けると、逃げるようにダイヤの後を追った。
「みんな集まったよね」
ダイヤの声が宮殿内にこだまする。
『鏡の宮殿』内部は外見とは違い、いよいよ本格的に鏡で作られているようだ。見に入るものが、四人以外の全てのものが鏡でできていた。
至るところに自分たちが写し出され、全く距離感覚も掴めない。はっきり言うと、居心地がとてつもなく悪かった。
タクトは顔を伏せたが、地面も鏡なので、不愉快そうな自分の顔が写し出された。仕方なく目を瞑ることにした。
「で、君の願いってなんだい?」
タクトは顔を伏せ、目を瞑りながらダイヤに聞いた。
「えっ?ああ、そうだった。ええっとね・・・ちょっと、あなたたち!どうしてみんな目を閉じてるの!」
どうやらタクトだけでなく、三人とも目を閉じていたようだ。
「だって、ダイヤさんはともかく、僕たちにとっては・・・過ごしにくいというか・・・」
フラットが尚も目を閉じながら言い辛そうに抗議した。
「大丈夫。みんなすぐに慣れるよ。ほらほら、目を開けて、ウェドもほら」
三人とも不愉快そうにしながらも目を開けたことを確認すると、ダイヤは咳払いをひとつした。
「・・・実は、この『クレイラ』に住んでるのはあたしとクローブの二人だけなの」
ダイヤは今までにない悲しい顔を浮かべた。