平日でも午前10時を過ぎた商店街のア-ケ-ドでは、昼時のかきいれに向けて、それぞれの店が開店しはじめていた。
この頃の時間帯は、朝の通勤通学程の人混みではないが、深夜の閑散とした状態でもなく、適当な人混み状態である。
そんな中、立ち並んぶ街路樹の下にあるベンチに、中年と呼べるかもしれない男と、5歳と3歳ぐらいと思われる子供とが並んで座っていた。
子供達の手には、コンビニの様な上品なおにぎりとは程遠い、只、大きくぶこつなおにぎりが握られていた。
飲み物もなく、子供達は人通りの目を気にすることもなく無邪気におにぎりを食していた。
昼には早すぎる外での食事である。
周りには飲食店が立ち並んでいるのに。
父親と思われる男の身なりもまた、適当な寒さをしのぐだけのもので、流行を意識したものではなかった。
その時の男の仕草、表情は詳しく覚えていない。が、3人並んでベンチに座っていた事と、男自身はおにぎりは食べていなかった事。そしてこの光景が今も鮮やかに記憶している。
男は休職ないし求職中の家庭の事情からの、昼には早過ぎるある親子の食事風景のひとこまと瞬時に勝手な推測をしてしまった。
その周辺からは、“鳥のさえずり”が無性に聞こえた。
最初、「どこから・・・」の疑問も、良く目を凝らして見ると、街路樹のこんもり繁った葉枝から聞こえてきたのであった。
こんなに人が行き交うすぐ傍で。