樋口君の家からの帰り道。時は夕方なのに、まだ日は高い。
「ねぇ、ちょっと二人に、付き合って欲しいとこがあるんだけど」
理沙の呼び掛けに、私と桜は快諾した。
理沙が付き合って欲しい場所は、学校の裏の大きな樹だった。
「なんでここなの?」
私は素朴に聞いてみた。
「ここ大好きな場所なんだ」
理沙はそういうと大きく背伸びした。
確かにそこは、小高い丘になっていてその樹越しに町を見渡すことができる。
「桜、知らなかったよ」
「私も…すごい」
私と桜はようやく夕陽に染まり始めた町並みを初めて見て感動した。
「実は思い出深い場所でもあって…」
理沙が懐かしそうに目を細めて笑った。
「ここなんだよね、登って降りれなくなって…圭ちゃんに助けてもらった場所」
久遠の話はなんだか切なくなる…なぜだろう…
「理沙はやっぱり…」
桜は続きを迷っていた。
理沙は空気を読んで明るく笑った。
「違うの!圭ちゃんは私にとって特別な人には変わりはないんだけど…」
私と桜は樹の下に腰をおろした。理沙はたったまま
「最近、まぁくんが気になるの」
と言ってのけた。
私は動じることなく笑い、桜は驚いていた。