人斬りの花 1

沖田 穂波  2009-05-24投稿
閲覧数[620] 良い投票[0] 悪い投票[0]


1-1 出哀


『やだねぇ,また人斬りが出たそうだよ。』

そう旅籠屋の女将が噂した。

人斬り。

それは,今,
何人もの死者を出している。
死んだ者は武士に商人と多彩だったが,皆,

一太刀で即死だった。
正体は不明。
だが,よほど腕が立つ者だと言う事は,
誰が見たって分かる。

「夜道を歩けば
殺される。」

そう囁かれる程,
その人斬りは人々を恐怖に陥れていた。


『あ,こらあんた,
外を出歩くのは止めときな。時期に日が暮れる。
人斬りが出るよ。』

旅籠屋の女将は
出ていこうとする若い男の客に声をかけた。

男は切れ長の目で女将をちらと見ると,
夕闇の中へと消えて行った。

男の名は,
鞍和 抄司郎
(くらお しょうじろう)
と言う。

年わずか18にして剣の腕前は一流だ。それは,

鞍和の負けなし。

と言う噂が町じゅうに広まった程だ。
いや,噂ではない。
彼は本当にそうなのだ。

もし彼が人斬りに出くわしたとしても,
抄司郎はその剣で,
人斬りと互角に戦うであろう。

しかし抄司郎には,
人斬りなど絶対に会わない自信があった。

今騒がせている人斬りとは,何を隠そう,
抄司郎自身の事なのだ。

抄司郎は今,
人斬りをする為に夕闇の道を歩いている。


≠≠続く≠≠


i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 沖田 穂波 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]
男子が夢中になる
ウルウル唇で誘惑…♪


▲ページトップ