それはいつから始まったのかよくわからない。
心臓って不思議なもので、気持ちに左右されて動悸の早さが変わる。
私は簡単に、あなたに心臓を動かされていたんだ。
『いいよ…尚子なら。』
雨音の中かすれた声を今でも覚えている。
それはとても非現実的なもので、でも事実起こってしまった。
───私は一つ先を生まれる、教師に恋をしたのだ────
高校生の私は友達も少なく独りでいる事が多かった。
何のとりえもなく、頭だけは中途半端に良い、そんな生徒だった。
それでも私は特に何か不満を感じるわけでもなく過ごしていた。
たぶん、不満を感じてもそれを解消してくれる人がいたから。
「尚子!久しぶりっ」
彼は一つ年上の先輩。
委員会がたまたま同じで、メールのやり取りをしている内に親しくなり今こうして付き合っている。
「久しぶりだね、淳は元気だった?」
「うん、まあまあ。やっぱさー、受験生は大変だよ、部活に勉強かけもたなくちゃいけないし。」
「そうだよねぇ。あー…私も来年は高3になるのかぁ。」
「ま!何かあったらいつでも言ってよ。相談に乗るから。」
「・・・・ありがと。」
これといった不満は何一つなかった。
彼氏こと淳は、とても素敵な性格の持ち主で周りからも信頼される素敵な人だったからだ。
しかし、こんな日々も簡単には長続きするものではなかった。