それは、歴史に残る大戦であった。
反創造主派の精鋭が揃って、神の都に奇襲を掛けたのだ。
都は紅蓮の炎に焼かれ、その煙りが夜空の星々を覆い隠した。
やがて「聖戦」と語り継がれるこの大戦の幕開けは、悲惨なものだった。
彼が目覚めたが故に。
「お前達に俺の衝動が止められるかッ!」
返答は無意味だった。
次から次へと敵を殺しては、返り血を浴びてゆく。
真っ赤に染まる夜空を見上げて内震えた。
血だ。
鮮烈で甘美で濃厚な、この身体が欲していた物。
この渇きを癒す唯一の妙薬。
カノンは笑った。
「もっとだ!もっと!俺を飽きさせるなッ!」
滑稽だ。忌ま忌ましい反逆者を瀕死で生かし、死ぬその刹那まで生き血を貪る。
これこそが闘神のあるがままの姿なのだ!
飢えはどこまでも底無しに襲ってくる。
カノンは牙を立てて、貪欲にその命を奪った。
「全員、皆殺しだ」