夏休みといっても私は水泳で大事な大会があり、桜も出発準備、理沙もダンスのレッスンと…何かと忙しい毎日を過ごしていた。
でも週に一度は三人で過ごす時間を大切にしていた。
そして桜が出発する前日も私達は集まっていた。
今日は、あの樹の下で集合
「本当はやいよね…」
「なんだかまだ信じられないよ」
私と理沙は改めて寂しさを感じ始めていた。
「桜にとっては、やっとだよ」
そう笑う桜は、覚悟を決めているのが伺えがえた。
桜の夢はプロのフルート演奏家。
今回の留学は、夢への大一歩だ。
「でも桜がバイリンガルだとは知らなかった」
理沙が意外そうに言う。
桜は、幼稚園まではミラノに住んでいた。
大人しくて引っ込み思案というのは、日本語に慣れるまでがわからなかったからと言う。
だから意外と大胆というのも理解ができる。
むしろ本来の桜はそっちなのだから。
「え?理沙ちゃんには話してなかった?」
天然なんだか憎めない性格も天真爛漫で桜らしい。
「千夏は知ってたの?ずるい〜」
理沙が茶目っ気たっぷりに私を押す。
「私も最近だよね?」
「だっけ?」
とぼける桜に苦笑い。
「で、樋口君…明日は?」