「恋愛…もうやだわ。」
ため息混じりに呟いた。雅が佳織に振られたのは3日前。共通の友人である祥子が心配して話を聞きに来た。
「そんなこと言わないの。」
元気づけたいが、月並みな言葉しか浮かばない。2人が座る微妙な距離が、一層言葉をかけづらくする。
「また、いい人見つかるって。」
何とか見つけて言った言葉は、見事に雅の痛みに刺さった。
「簡単にいうな!」
雅の剣幕に思わずたじろいた。
「すぐ、すぐに忘れられるわけないだろ!!」
「ごめん…。」
しかし、祥子の様子を見て一瞬で正気に戻った。
「いや、こっちこそ、ごめん。」
しばらく気まずい雰囲気が流れたが、祥子が口をひらいた。
「分からない。」
「何が?」
「雅を振った佳織の気持ち。」
「…。」
「雅はいい男だよ。すごく。」
「…。」
静かな時間が過ぎた後、雅が口を開いた。
「ありがと、な。」
「うん。」
「また、時間作れる?」
「え?」
「今度、どっか行かない?」
「あ…うん。」
「じゃ…。」
雅は恥ずかし気にかけていった。
祥子顔を赤らめ、うつむいた。
「作戦成功。」
しかし、その表情には、誰も見たことがない不気味な笑みが浮かんでいた。