猫好きでありながら魚屋ではない八百屋のご主人の話では、鼠が集まるかは分からないが首からホイッスルを下げた猫がいるカフェーがあるとのことでした。
詳しくきくと その猫の存在を知ったのは極最近のことで、八百屋のご主人には この町の猫ではないように見えたそうなのです。
町猫かどうか 見ただけで判るのですにゃ?
子猫が尋ねると八百屋のご主人は笑いながら申します。
長年 猫を凝視してるとね、なんとなく それくらいは判るようになるのさ、と。
か、カッコイイ?
ちょっとした恐怖を もよおしそうな八百屋のご主人の発言に素直な憧れを抱く お子様な子猫なのでした。
親切で優しげな八百屋のご主人に別れを告げ、子猫は件の猫カフェー <猫屋猫八>へ向かいます。
町へ着くまでの紆余曲折を思うと、あっけないほど あっさりと 件の猫カフェー<猫屋猫八>に到達しました。
ここがねこやねこはちにゃにゃ。
そう、子猫は人間文字の知識もあったのです。
それというのも子猫は幼い頃に生き別れた母猫に、懇々切々と学を得るよう言い含められていたのでした。
子猫には何故それが必要なのかは見当もつきませなんだが、いつか自分たちを引き寄せる要因となればと願って勉学にもひそかに励んでいたのです。
今こうして猫カフェー<猫屋猫八>の看板を識別できるのは竹内さんの購読していた新聞の上に陣取り 僅かながら おぼえのあった平仮名を頼りに解読と暗記を繰り返した成果です。
ごめんくにゃさい
と、声をかけて軒を くぐりましたが誰も気にする様子はありません。
むしろ子猫の存在など 一切感知されていないようでした。
にゃにゃ?
純真無垢な子猫は町にいたときでも 大胆な行動はできずにいたものですから 人間の出入りする建物には足も鼻先さえも差し込んだことはありません。
お店というものを知らなかったのです。
勝手に入って いいのにゃ?
と、おっかなびっくり耳を回しつつ 恐る恐るにじにじと進みます。
首にホイッスル、首にホイッスル。
そのような奇抜なファッションは すぐ目に留まるもの、子猫にとっては ありがたかったことでしょう。
眼光鋭い猫の姿を見出だしたのは まもなくのことでした。