「ジュワー、カチャカチャ」
妻の朝食を作る音で、我が家の住人は目を覚ます。
いつもと変わらない一日の始まりだ。
カカア天下で有名な土地柄とは裏腹に、我が家は亭主関白であると思っている。
妻と連れ添い20年、ごく普通なサラリーマンの私と、高校生と中学生の子供が居る一般的な家庭だ。
寒さも厳しくなった12月の深夜に、トイレに行こうと布団から出ると、隣に寝ているはずの妻の姿が見当たらない。
「あれっ?!トイレかな?」と廊下を歩いて行くと、深夜にもかかわらず居間の電気が点きっぱなしだった。
「もしや、泥棒か!?」と、居間の扉を少し開けて覗くと、そこにはコタツで何やらやっている妻…
私は、妻に声も掛けずに用すませて また寝てしまった。
次の日の深夜も、また次の日も、妻の謎の夜更かしは続いた。
怪しすぎる妻の行動に、ついに私は… 「何をコソコソとやってるんだ!」 と爆発してしまった。
妻は怯えながらも、珍しく「観たい深夜番組があるの!」と逆ギレした。
それ以来、どことなくギクシャクとした日々を過ごしていた異常な程寒い朝、 いつもの様に弁当を持ち、玄関でを出ようとした時、
「ちょっと待って」と、妻が駆け寄って来て 私の首に手網のマフラーを巻いた。
妻の夜更かしの理由がすぐにわかり、申し訳ない気持ちで一杯だったが、知らないふりをして
「こんなのいつ作ったんだよ」と訪ねると、
妻は、「ライオンが寝てる間にね!♪」と
ペロッと舌を出して微笑んだ。
20年分のクリスマスプレゼントを貰った…