雪だけの世界で2

白夜  2009-05-28投稿
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 お帰り。僕
 
 その声は懐かしくも愛おしい。涙が溢れた。嬉しくて──
 
 でも
 
 
「<僕>って誰!!」
 
 目覚めの第一声。つたい落ちる涙と共に跳ね起きた。
 
 いつの間にかベットの上。
 
 目に写るのは見も知らない誰かの家。窓から外が見えた。
 
 雪は無かった。
 
 夢を、見ていた? そう思った時、部屋のドアが開いた。
 
「あっ目が覚めた?」
 
 知らない女なの人。
 
「あの……あなたは? ここは? 僕はいったい……」

 トコトコと部屋に入ると真っ白い長い髪の女が、ニコニコと笑いながら傍まで来た。

「お帰りなさい。ユキ」

 あの夢の雪の中で言われた<お帰り>と同じように言われ、首筋に寒気が走った。
 
「お……帰り……? それに名前なんで之(ユキ)って知って……」

「えっそれはあなた雪(ユキ)でしょ? それにあなたを知らない町の人はいないわ。だってその顔」
 
 女が話す途中、頭にドスッと重しがかかった。いきなりの事にまた心臓が跳ねる。
 
「お〜ま〜え、このバッカヤロ────!!!!」
 
 耳元で大声で言われた。反射的に耳をふさいだ。それでもキーンと耳鳴りがした。もう何がなんだか、泣きたい気分だった。
 
「なっちょユキ! 初めて会うんでしょ? そんな」

「いいんだよ! こんな馬鹿、本当に馬鹿野郎なんだから!」
 
 この声はあの時の、バッと顔を声の主に向けた。そこには仁王立ちした──
 
「なんで……僕が──」
 
 同じ顔。髪の長さは違う。でもそれ以外は<同じ>だった。
 
「あぁ、当たり前。俺達同じ雪だし」

「同じ? 雪……?」
 
「あの雪を見ただろ? 俺達はあの<雪>から生まれた。そうだな言うなら双子?」

「雪……から? 何……言って……僕にはちゃんと家族が」

「へぇ親いたの?」

 親は
 
「親はいない。……いな……い? で・でも兄はいた!!」

「それは本当の兄?」

 同じ顔の奴が、顔を近付けてニヤッと笑いながら訊いて来た。目の前の同じ顔を見ながら、疑問が芽生えていた。
 
 自分には両親はいない。いつから? いつ……から?
 
 いつ……から……
 
 いつから兄は<兄>だった?



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