雪だけの世界で4

白夜  2009-05-28投稿
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 見知らぬ場所で見知らぬ二人と今はここにいる。
 
 


「雪……あの雪は」
 
「その<雪>は我々が目指す新境地です。雪だけの世界。私達はその世界に行く為なら何でもします」
 
 何でも? あんな場所に行くために?
 
「何故? 行っても雪しか無かった。それに──」
 
 桜が首を振る。ギュッと服を握るとうつ向きながら言った。
 
「だから行くんです! 私達はもう──その世界しか無い」
 
 悲鳴にも似た声で言われた。握り締めている手が震えている。泣いているように見えた。
 
「別にいーじゃん。行きたいなら一緒に行けば、なっ?之」
 
 窓の近くに佇み、外を見つめていたユキが言った。上下式の窓をガコッと持ち上げ開けた。
 
「之も行くよな?もちろん」
 
「何で? 僕まで……」

「だってあの世界が俺達の<還る>場所だから」
 
 かえる? 帰る場所?
 
「僕は……いったい何?」

「雪から生まれた雪かな? でも人間でもあるし、そーだな、雪男!」
 
 明るい声で、あっけらかんとしながらユキが言った。何だか力が抜けるユキの楽観さに少し救われていた。
 
「あの僕が今までいた所は……兄さんは僕の兄さんだよね?」
 
 僕の帰る場所は兄さんの所に決まっている。わけの分からない事ばかりだけど、でも毎日食べていた朝食は美味しかった。
 
 会いたい。会って兄さんに訊きたい事がたくさんある。
 
 
「ダメだよ」
 
 ユキが言った。険しい顔で、声に怒りが満ちていた。
 
「なん……で?」
 
 突然、怖い形相になったユキにビビりながら訊いた。
 
 ユキは何も言わなかった。
 
 沈黙に困っている之を見かねて桜が話す。
 
「──……多分、之が言う<兄>はあなたを殺す者です」
 
 えっ?と思ったその疑問は声になっていなかった。

「あの男は生まれたばかりの之を拐って行った。何が目的か分からない。でも分かる。雪を嫌うやつらだ……きっと」
 
 拐う? 誘拐?
 
 何それ、もう
 
 嫌だ──

 わけが分からない。
 ここはどこ?

 助けて
 
 僕の帰る場所に
 
 兄さん──
 

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