雪だけの世界で5

白夜  2009-05-28投稿
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 兄さんが僕を殺す?
 
 殺すつもりならいつだってできたはず。
 
 ユキや桜の方を信じるなんて出来ない。
 
 
「兄さんに……会いたい」
 
 もう限界だった。雪とか知らない。もう嫌だ。
 
 ベットの上で膝を抱え丸くなる。いきなり雪にのまれて、気付いたらわけが分からない事ばかり、兄さんは僕を殺すとか──
 
「──……ようやく……<雪>がお前を連れ戻してくれたのに、お前は<雪>の本能すら無いのか?」
 
 怒りと悲しみに顔を歪ませているユキを直視できない。

「僕は僕だ。雪なんかじゃ……ない」

「あぁ……ああそうかよ!! お前がどんなに否定しようと必ず俺達はあの雪だけの世界に還るしかない!! それに元の……お前の兄の所には帰れない。今は<ここ>でこの世界で生きるしかない!」
 
 窓から見える世界は緑に溢れていた。快晴の下には人の姿が見える。
 
 兄さんといた世界は窓から何も見えていなかった。やっぱりおかしかった。今は分かる異常さ。


「でも……優しかった兄さんの笑顔を今は見たい」
 
 
 
 
 
 ユキは子供みたいに膨れて出て行った。桜が一人、板挟みのようになっていて可哀想で申し訳無かった。
 
 でも僕の帰る場所は兄さんの所だけ。
 
 それから桜が一緒に過ごして色々教えてくれた。身の回りの事もしてくれて助かった。自分だけで出来るようそれも教わっている。
 
「ユキはあの雪だけの世界で生まれたんですよね? なのに何で今はここにいるんですか?」
 
 晴天の下、桜と一緒に洗濯物を干している。白いシーツをめいいいっぱい広げ、少し高い所にある物干しにかける。
 
「それはユキが言うには人間になったから、だそうです」
 
 ハテナマークが乱舞する。
 
「人にならなければ、多分雪だけの世界にずっといたと思います。説明が下手ですみません。あのだからその……」
 
「弾き出されたんだ? 雪じゃなくなったから……でもなら人間の僕達が行っても入れないんじゃ……そもそも<雪だけの世界>っとどこにあるの?」

「──分かりません。この世界のどこかにあるのか、別世界があってそこにあるのか……でもユキがきっと連れて行ってくれます」



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