奈央と出会えたから。<365>

麻呂  2009-05-28投稿
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ユカは、黙ってドアの方をにらみつけていた。



きっと、渋川は、



ユカのお父さんが、将来、市議選に立候補するコトを知っているから、



あんなコトを言ったのだろう。



教育委員会の教育長である、森宮の父親は、



そちらのコトにも精通していると思うから。





『みんな、大丈夫?!渋川先生、いきなり怒鳴ったりして、大人気ないわね!!』



篠原先生が、あたし達を気遣い、そう言ってくれた。



ケド、篠原先生の言葉に、



聖人も、ユカも、黙っていた。



まだベッドの中に横になっていたあたしは、



起き上がるタイミングを探していた。



『木下さん、具合はどう?!』



そんなあたしの気持ちを察してくれたかの様に、



篠原先生が、あたしに話し掛けてくれた。



『はい。もう大分、気分が良くなりました。』



『そう。良かった。でも、もう少し休んでいきなさい。』



『はい。でも、もう具合も良くなったので。』



あたしは、ベッドから起き上がった。



『奈央。無理すんなよ?!まだ寝てろって!!』



心配顔の聖人が言った。



『そうよ。ただでさえ、奈央は貧血気味なんだから。』



聖人に次いで、ユカも。



『ありがと‥‥聖人、ユカ。でも本当に、もう大丈夫だから。』



独特の消毒薬の匂いにも、そろそろ慣れてきた。



保健室に来てから、どれ位の時間が経過しただろう――



『みんな強いね!!先生も、みんなと同じ中学生位の頃は、色々な事で悩んだな。』



篠原先生の一言に、あたし達3人は、一斉に注目した。



『へぇ。先生の中学生時代って、どんなだったの?!

すげぇ優等生だったとか?!』



聖人が、真っ先に質問すると、篠原先生は、ますます意外な答えを返してくれた。



『優等生どころか、結構、問題児の部類だったわよ。』



『え゛?!マジで?!』



篠原先生の質問の返答よりも、聖人の反応の方が、面白かったな。



『先生、今回の件で、詳しい事は何ひとつ知らないけど、

これだけは覚えておいてね。

大人は大人でも、腐った大人ばかりじゃないって事!!』

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