それは偶然だった。
たまたま借りた本を返しに、図書室に踏み込むなり、我が目を疑う。
そこには花音が、女子とキスをしていた。
力が抜けて、本が床に落ちる。
気配に気付いた花音が、慌てて近づいてくる。
「これは違うんだ」
「弁明なんていらない」
「時雨ッ!」
わかっていたはずだった。
所詮男の恋人なんて、遊びのようなもの。
真実の愛なんてどこにもないのだ。
時雨は図書室を飛び出すなり、涙が溢れ出した。
悔しかった。
信じたかった。
けれど、この目で見てしまったのだから。
外は酷い雨が降っていた。
構わずに学校を飛び出した時雨は、家から近い公園のベンチに座ると、天を仰ぐ。
制服が雨を吸って肌に張り付いて気持ちが悪い。
雨粒なのか涙なのかわからなかった。
酷い頭痛と寒気で、動けそうになかった。
このまま死んでしまいたい。
あぁ、意識が遠のいていく。
瞼が重くて、次の瞬間、時雨は意識を失った。
愛しくて切ない。
君を失いたくない。
離したくない。
私だけの眠り姫。
誰かが髪を撫でていた。
壊れ物をそっと扱うように。
誰かの温もりが、伝わって来る。
ゆっくりと瞼を開けると、ベットの隣に座っていたのは花音ではなく、生徒会長の水無月 綾斗だった。
驚いて起き上がろうとした時雨を綾斗が止めた。「まだ動ける状態じゃない。熱がまだ高いんだから」
「このぐらい平気で」
言葉は突然、唇に塞がれた。
弱った身体に綾斗がのしかかる。
「会長!?」
「あいつとは寝たんだろ?どんな風だった?」
パジャマ姿の時雨を、力任せに脱ぎとった。
「な、なんで・・んッ」
綾斗の口付けは巧みで、手慣れている。
「私の物になれ」
下半身を撫でられて、時雨は頬を紅潮させる。
「い、嫌だッ」
「ここは嫌がってないね
?」
好きでもないはずなのに、快感が沸き上がって、時雨の理性を奪う。
戒音の作品愛読ありがとうございます♪前作も読んで下さると嬉しいです。